2009年3月4日水曜日

大般若祈祷会

毎年3月4日の大般若会を、本年もお勤めいたしました。
これは皆様の一年の無病息災を祈り、本年がますます良い年になるようにとの願いをこめてお勤めさせていただく、禅宗での代表的なご祈祷です。
三蔵法師として知られる玄奘三蔵がインドでの留学を経て、膨大な経典と共に長安の都に帰ってきたのは、旅に出てから実に18年ぶりの645年のことでした。
唯識という、仏教での深層心理に関する学問を主に修めた玄奘でしたが、帰国後の中国での翻訳作業において、『大般若経』600巻や、『般若心経』を訳出したことの方が、一般的には知られています。

このたびの法要で用いられているのが、まさにこのときの翻訳による『大般若経』なのです。『大般若経』は「空」に関する教えを中心としてさまざまに展開していますが、その教えは262文字の『般若心経』にエッセンスがまとめられ、さらには最後の「ギャーテー ギャーテー ハーラーギャーテー」という真言にすべてが集約されていきます。

仏教では世の苦しみの根源には無明があるという認識のもと、教義が構築されていきます。
無明とはすなわち仏教の教えに対し暗く無知である状態です。そしてその「無明」を「般若」つまり仏教の智慧によって破壊することに無限の力があるのです。よってこの『大般若経』を奉持し、転読という方法で、経文によって巻き起こる風をすみずみに行き渡らせることが、功徳を生むのです。

とかく間違った認識で世を見、間違ったマスコミの認識を信じてしまうことが、世相を暗くしてしまう一因であるかもしれません。現今の経済の状況などは、ほんの一時の浮沈にしか過ぎません。
本物の教えは、経典を始め、古典の中にこそ見いだせます。仏教経典に限らず、千年の歴史に耐え抜いた古典籍に親しむことによってこそ、われわれの進むべき道筋が見いだせると思います。






法要後、副住職から、このたびお迎えした羅漢さまについてのお話をさせていただきました。

釈尊涅槃会

2月15日はお釈迦様がお亡くなりになった日です。それにちなみ、お団子をお供えし、法要をお勤めいたしました。

お釈迦様は35歳(一説に30歳)でお悟りになったあと、長い伝道の旅に出られました。晩年のある日、クシナガラという町で鍛冶屋のチュンダという者の供養による料理(豚肉料理であったといわれます)を召し上がられた後、体調を崩されてお亡くなりになったといいます。直接の原因がこの豚肉料理であったのかは定かではありませんが、お釈迦さまは実は胃腸が弱かったともいわれています。

しかしここで興味深いのは、このときの料理が豚肉のものであったということです。一般的には禅の精進料理に代表されるように、仏教徒は肉食をしないと思われている方が多いと思いますが、実は他宗教と比較しても、食に対するタブーがほとんど無いのが仏教なのです。

食と宗教のテーマは大変興味深いのですが、長くなるのでまた今度。